遺言執行者のサポート
目次
1.遺言執行者とは?
2.遺言執行者の指定・選任する方法
3.遺言執行者の義務と権限
4.遺言執行者が行うこととその手順
5.遺言執行者の就任を拒否する方法
6.遺言執行者の解任と辞任の方法
7.遺言執行者を専門家に委任することとその報酬
1.遺言執行者とは?
遺言執行とは、遺言者の死後に遺言の内容を実現する手続きをいいます。遺言執行者とは、その手続きを行う人のことです。
「民法第1012条第1項
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」とあります。
2.遺言執行者の指定・選任する方法
(1)遺言による指定
(2)家庭裁判所に遺言執行者の選任請求を行う
以上の2つの方法がありますが、相続人全員が協力できるなら相続人全員で遺言内容を実施していくことも可能です。必ず選ばなければならないというものではありませんが、指定されている場合、遺言者の意思が優先されます。
3.遺言執行者の義務と権限
遺言執行者は、遺言書に記載された内容を実現する手続きを行うことができます。遺言執行の手続きには、認知、推定相続人の廃除や取り消し、遺贈、祖先の祭祀(さいし)主宰者の指定、生命保険金の受取人の変更などが含まれます。
4.遺言執行者が行うこととその手順
遺言執行者になった場合、どのように遺言内容の実現をしていけばよいか解説いたします。法務局に保管されていなかった自筆証書遺言の場合、事前に家庭裁判所で検認手続きをしておくことが必要です。
①「就任通知書」及び「遺言書の写し」を相続人全員に送付する。
➁相続人・相続財産調査をしたうえで、相続財産目録を作成・交付する。
※相続財産目録を作成するにあたっては、不動産権利証や預貯金通帳などの関係書類の所在確認・保管といった相続財産の管理を開始するとともに、不動産の全部事項証明書や預貯金の残高証明書を集めるなどして遺言者の相続財産を調査しましょう。また、財産目録を交付するため、戸籍謄本を集めるなどして遺言者の相続人を確定することも必要です。
③遺言事項の執行と完了報告を文書で相続人全員に送付する。
※遺言執行者にしかできない内容として、「遺言認知」や「相続廃除」の手続きは、相続人や利害関係人にはできず、遺言執行者だけが行えます。
「遺言認知」:戸籍法64条のとおり、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に認知の届け出をしなければなりません。具体的には、認知届出書に必要事項を記載のうえ、遺言書の謄本を添えて市区町村役場に提出します。
「相続排除」:遺言執行者は、遅滞なく、その推定相続人の廃除や取り消しを家庭裁判所に請求しなければなりません。(民法第893条)
※不動産・預金の遺贈
「不動産」:法務局に申請をして受遺者に登記を移転します。
司法書士も代理人として登記の申請をすることができますが、司法書士を遺言執行者に指定した場合には、遺言執行者として登記を申請することになります。
「預金」:受遺者の意向や銀行の対応を考慮しながら、預金を解約して払い戻しを受けて受遺者に引き渡すか、あるいは預金名義を受遺者に変更します。
5.遺言執行者の就任を拒否する方法
遺言執行者に指定されても就職するかどうかは自由ですので、拒否して問題ありません。拒否したい場合は、相続人にその旨を伝えましょう。伝え方に決まりはないため口頭でも良いのですが、形に残るよう書面がより望ましいといえます。
6.遺言執行者の解任と辞任の方法
①解任:遺言執行者がその「任務を怠ったとき」、その他正当な事由があるときは、家庭裁判所に解任を請求することができます。
「任務を怠ったとき」とは、遺言内容の実現を全くしない場合のみならず一部しかしない場合も含みます。
➁辞任:遺言執行者はいったん就職を承諾した以上は、自由に辞任することはできません。辞任ができるのは「正当な事由」があるときに限られます。辞任する際には相続開始地を管轄する家庭裁判所に許可(遺言執行者辞任許可審判)を得る必要があります。ですので、遺言執行者の就任について慎重に判断する必要があります。
7.遺言執行者を専門家に委任することとその報酬
専門家に依頼することで、相続人間の疑念等の発生を抑えることができます。ただし、専門家に遺言執行者を委任するということは、その執行報酬が発生いたします。この執行報酬はだれか一人が負担するのではなく、相続人全員で負担し、遺言内容の執行が完了したタイミングで支払います。事前に相続人間で調整をしておくことが望ましいです。
また、遺言書で専門家の遺言執行者を指定する場合には、その報酬額も遺言書の中に記載しておけば、遺されたご家族の負担を更に減らせます。
家庭裁判所に遺言執行者選任の審判を申し立てれば、その報酬額も審判の中で定めてくれます。
(アイリスの司法書士を指定した場合の報酬額)
※相続登記(不動産の名義変更)も原則上記報酬に含まれますが、以下の場合には加算80,000万円(税抜)が発生いたします。
- 複数の相続人がそれぞれ単独で不動産を相続する場合(登記申請の件数が多い場合)
- 亡くなった方の兄弟姉妹や甥姪が相続人の場合(相続関係の調査が複雑になるため)
- 早急な対応が必要な場合や複雑困難な場合
- 管轄法務局が2か所以上になる場合
- 固定資産税評価額が1億超えの場合
- 不動産の数が6個を超える場合
となっております。ぜひ、ご検討ください。